2026.11.05 受付中
IHJ Cultural Lobby 異種間クロストーク#13 「AIと哲学」
アート・デザイン

生成AIが日常に溶け込む「当たり前」となった今、私たちは、AIがどのような世界観、哲学、政治性の上に成り立っているかを意識しているでしょうか。現代のデジタル技術は西洋近代の産物であり、その固有の合理性や論理を内包しています。知性はしばしば「単一かつ普遍的なもの」として捉えられ、地域ごとの歴史や身体性、宗教性、儀礼、環境との関係、共同体的な知などからは切り離されてきました。しかし、もしAIを「ひとつの知能」ではなく、「複数の知能」が相互に関係しながら生成されるものと考えたら? もしそこに、東洋思想的な関係性や身体性、仏教的な生成変化、多神教的で混沌を許容する世界観を差し込めば、AIの未来は全く異なってくるのではないでしょうか。今回はこの問いを哲学と実装の両面から掘り下げます。
哲学者ユク・ホイ氏は、10年前「宇宙技芸(コスモテクニクス)」という概念を提唱し、テクノロジーを普遍的に捉える見方に異議を唱えました。現在オランダのエラスムス大学で教鞭をとり、近年発表した「再帰性」をめぐる三部作では、テクノロジーという視点から西洋近代哲学の歴史を捉え直し、「技術多様性(テクノダイバーシティ)」という認識論的・政治的なアジェンダを提示しています。また、京都学派の哲学にも取り組み、「近代の超克」という思想的課題を改めて捉え直しました。テクノロジーそのものを抜本的に捉え直す姿勢は国際的な注目を集めています。
一方、三宅陽一郎氏は、『FINAL FANTASY XV』などを手掛けるゲームAI開発者で、環境、キャラクター、群れなど異なる領域を司るAIが自律的に判断し、相互作用する「複数の知能」を、ゲームの中で設計・実装してきました。現在は東京藝大ゲーム・インタラクティブアート専攻で教鞭を執りつつ、目的、論理、意図性を中心とする西洋的AI観を、東洋哲学における関係性、身体性、仏教的観念論、そして「生成変化」の思想と接続し、より包括的なAIの可能性を提起しています。
ホイ氏が「技術多様性」のもと、哲学の最前線から現代のテクノロジー社会が抱える課題に応答する思想家であるなら、三宅氏はその発想に響きあう複数的知能のあり方を、世界中で愛される商業ゲームに実装してきた開発者です。二人の対話は、AIを単なる技術革新としてではなく、人間がどのような世界を生き、どのような知能と共に未来を作るのか考える場となるでしょう。西洋中心主義的テクノロジー観を超え、東洋思想、都市文化、ゲームAI、プラットフォーム社会が交差する地点から、多様な知能とともにある未来を想像してみませんか。
イベント概要
| 日時 | 11月5日(木)6:00~7:30 pm (開場: 5:30 pm) |
| 会場 | 国際文化会館 岩崎小彌太記念ホール |
| スピーカー | ユク・ホイ(哲学者、ロッテルダム・エラスムス大学哲学部教授) 三宅 陽一郎(ゲームAI開発者・研究者、東京藝術大学大学院映像研究科 ゲーム・インタラクティブアート専攻教授) |
| モデレーター | 長谷川 祐子(国際文化会館アート・デザイン部門ディレクター) |
| 言語 | 日本語・英語(通訳あり) |
| 参加費 | 3,000円(会員:2,000円、学生1,000円) *会員配偶者・パートナーの方も会員チケットをお求めください。その他の会員ご同伴者様は一般価格で承ります。 |
| 共催 | 牛場記念フェローシップ、新領域戦略研究所(RAIS) |
| *当日は動画および写真の撮影が入ります。ご了承ください。 |
プロフィール
哲学者、ロッテルダム・エラスムス大学哲学部教授
ユク・ホイ
哲学者。ロッテルダム・エラスムス大学哲学部教授。同大学「Human Conditions」講座を担当し、エラスムス哲学・テクノロジー研究所ディレクターを務める。香港大学でコンピューター工学、ロンドン大学ゴールドスミス校で哲学を学び、ベルナール・スティグレールの指導のもと博士論文を執筆。香港城市大学教授、東京大学、中国美術学院客員教授などを歴任。哲学とテクノロジーの関係を中心に研究し、2014年よりResearch Network for Philosophy and Technologyのコンビーナー、2020年よりBerggruen Prize for Philosophy and Cultureの審査員(現在は審査委員長)を務める。
主な著書にOn the Existence of Digital Objects(University of Minnesota Press)、『中国における技術への問い 宇宙技芸試論』(ゲンロン叢書)、『芸術と宇宙技芸』(春秋社)、『ポストヨーロッパ』(岩波書店)、Machine and Sovereignty(University of Minnesota Press)、Kant Machine: Critical Philosophy after AI (Bloomsbury)などがある。
アジアおよびヨーロッパの公的研究機関から数々の助成を受賞しており、2025年には、現代アートに影響を与える世界の100人を選出するArtReviewの「Power 100」に選出された。
ゲームAI開発者・研究者、東京藝術大学大学院映像研究科 ゲーム・インタラクティブアート専攻教授
三宅 陽一郎
京都大学で数学を専攻、大阪大学(物理学修士)、東京大学工学系研究科博士課程(単位取得満期退学)。博士(工学、東京大学)。2004年よりデジタルゲームにおける人工知能の開発・研究に従事。東京大学生産技術研究所特任教授、立教大学大学院人工知能科学研究科特任教授、九州大学客員教授、東京大学先端科学技術センター客員上級研究員。国際ゲーム開発者協会日本ゲームAI専門部会設立(チェア)、日本デジタルゲーム学会理事、人工知能学会編集委員会副委員長・シニア編集委員、情報処理学会ゲーム情報学研究会運営委員。『大規模デジタルゲームにおける人工知能の一般的体系と実装 -FINAL FANTASY XVの実例を基に-』にて2020年度人工知能学会論文賞を受賞。
主な著書に『戦略ゲームAI解体新書』(翔泳社)『人工知能のための哲学塾』『人工知能のための哲学塾 東洋哲学篇』(ゲンロン人文的大賞2018受賞)(ビー・エヌ・エヌ新社)などがある。







