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世界的にCO2排出削減が議論されているが、日本国内においては特に民生の分野で削減する必要性が高まっている[1]。建物の構造材に注目すると、コンクリートや鉄に比べて、木材は製造段階でのCO2排出を抑制できる。さらに切ってからも新たに植えなおし、また適切なタイミングで伐採することで、木はその循環サイクル全体として常にCO2を吸収するサステナブルな材料である[2]。そして幸運なことに、日本は世界第3位の森林保有国なのである。

しかしながら、木材自給率は3割に満たない[3]。日本の森林が急峻であることや製材業者が小規模であることなどから、乾燥の品質やコストの面で輸入材に遅れをとっているのである。そしてニーズが少ないために伐採が適切な時期で行われず、売れても次の苗木を植える分のコストを賄えない。その結果、森林維持のサイクルが効果的に回っていかずに、CO2排出効果は本来の能力を発揮できず、土砂崩れなどの被害拡大にもつながっている。

これらを背景として、政府は木材の利用を推進していく方針へ転換した。戦災や震災で家屋が延焼した歴史により日本は長らく脱木造住宅であったが、2000年に建築基準法が改正され、木造に関する基準が大きく緩和された。公共建築物で木材利用を推進する法律[4]制定され、今後木材利用が増加していく環境は整ってきている。

それに伴い、中高層の木造建築技術に関する研究開発が進んでいる。NPO法人team Timberizeは東京都の世田谷や赤羽に4または5階建ての木造集合住宅を耐火建築として竣工させた。また竹中工務店は横浜に4階建ての大規模ショッピングセンター「サウスウッド」を完成させている。これらは、それぞれが1時間耐火という技術を開発したことで可能になったものである。現在はそれぞれの耐火技術で2時間耐火の認定を目指して研究開発に勤しんでいるところだ。この技術が確立されれば、採用する工法にもよるが、耐火性の面では何階建てでも木造で建てることが可能になる[5]。木造建築の進化は都心部のコンクリートジャングルの景観を様変わりさせるかもしれない。

一方で建設業ではないところでも木材利用は進んでいる。全国に1800人の会員、17の支部をもつ日本全国スギダラケ倶楽部は、家具や屋台、さらには電車などさまざまな用途での木の使い方をデザインしている。彼らは子供から大人までを巻き込んだ全国各地でのワークショップなどを通じて、身のまわりに溢れる規格化された工業製品に代わって、地域的・社会的なものとして木を日常生活の一部に位置づけ直そうとしている。興味深いのは結成10年が経ち、最近では少なからず経済も回すようになってきた

2020年の東京オリンピック向けに、展覧会で発表したスタジアム群のひとつ (写真:淺川敏)
Team Timberizeが設計した30mの高さをもつ木造のビル「30」のCGイメージ(提供:team Timberize)

<Interviewees>
腰原幹雄: NPO法人team Timberize理事長、東京大学生産技術研究所教授、建築構造設計者
小杉栄次郎: NPO法人team Timberize副理事長、秋田公立大学准教授、建築士
若杉浩一: パワープレイス株式会社所属プロダクトデザイナー、日本全国スギダラケ倶楽部発起人
柴原薫: 南木曽木材産業(株)代表取締役、伊勢神宮に御神木を納めている
Alastair Townsend: 東京に拠点を置く建築事務所Bakokoの共同設立者

<注>
1. 国立環境研究所調査
→産業部門や運輸部門は2005年比でCO2排出削減が進んでいるが、家庭部門・業務その他部門、すなわち建築関係の分野では削減するどころか増加している。
2. 森林総合研究所 平成21年版 研究成果選集「2050年までの木材利用によるCO2削減効果シュミレーション」
→木材には「炭素貯蔵効果」「省エネ効果」「化石燃料代替効果」という、3つのCO2削減効果がある。
3. 林野庁 平成26年度 森林・林業白書
→2013年の日本の木材自給率は28.6%
4. 「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」2010.10.1施行
5. 腰原幹雄、安井昇「都市木造入門」日経アーキテクチュア 2015年2月10日号
→法律上、柱梁工法では3時間耐火が可能にならないと15階以上の建物は建設できないが、CLT工法や枠組み壁工法を用いると2時間耐火で上限なしに建設可能になる。

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